イースター休暇ポーランド旅行~帰途編
でもまぁ、経験ということで、良しとします!
ヴィエリチカ岩塩坑は、13世紀に採掘が開始されて以来、長年にわたってポーランド王国の財政を支え続けて来た岩塩の採掘場です。なんと、共産体制崩壊後の1996年まで商業採掘が続けられていました。
現在は岩塩でできた地下坑道の一部(ガイドさんによれば、全体の5%に過ぎないそうですが…)を見学できます。
ただこのヴィエリチカ、大勢の人が亡くなった、過酷な重労働の現場でもあります。
採掘が行われていた当時、頻繁に発生する毒ガスや爆発事故で、子供を含む多くの労働者が亡くなりました。労働者の50%が、常に死の危険と隣り合わせの状態で毎日働いていたそうです。
そのような過酷な環境下で、信仰心篤い当時の人々は、岩塩を削って坑道の中に教会を作り、聖像画や聖人像、十字架や演壇やシャンデリアなど、全て岩塩でできた教会を建てました。
この地下教会を見た時は、岩塩を削って芸術作品を作りだした技術そのものよりも、人々の篤い信仰心に心打たれました。…が、肝心の写真がほとんんど残っていません。というのも、見学ツアー半ばからカメラの調子が「おかしく」なり、どこを撮っても「火の玉」?のようなものが写ってしまい、心霊写真みたいな写真しか撮れなくなってしまったからです。…ううん、いろいろな場所を旅行してきましたが、こんなことは初めてです。ちなみに、岩塩坑を出た途端に、まるで何事もなかったかのようにカメラの調子がはすぐに直りました。…まぁ、下手くそなカメラの腕のせいにしておきます(汗)。
そんなわけで、ろくな写真が残っていませんが…
現在では教会や聖人像だけでなく、純粋なアートとしての岩塩像も作られています。上の写真はポーランドの歴史的場面を再現した岩塩の像ですが…中には「小人の庭」など正直「子供騙し」のテーマパークじみたものまで…ううん、感じ方は人それぞれでしょうが、「人が何人も亡くなった場所」には相応しくないような…。その他、ポップなライトアップや音楽効果など、正直、アミューズメントパークを目指したのかな?とでも思いたくなるような展示方法に、わたしとクリスはちょっと残念さを感じましたね。
このような岩塩の石柱一本で、当時は豪邸が二軒くらい建ったそうですが、その富貴が現場で過酷な労働に従事した労働者たちに分配されることはありませんでした。
そんな場所を、愉快な音楽と共に誰でも鑑賞できる平和な時代に生まれたことを、感謝すべきなのかもしれません。
さて、この地下坑道を見学した後、地上へ上がるためのエレベーターが二つしかない上、ほんの数人しか乗りこめないため、さほど混んでいなかったにもかかわらず、某ネズミランドの人気アトラクション並みの待ち時間を立ったまま過ごす羽目になりました。とはいえ、団体旅行客は優先されるらしく、隣の団体用搭乗口はスムーズだったように感じます。…ということで、ここを訪れるなら是非ツアーに参加した方が良いのでは、と思います。
さて、これで旅の全行程は終了。
一路、ベルリンへ向けて出発です。
初春の陽気があまりに気持ち良いので、思わず、車をオープンカーに。
ドイツではよく見かけるオープンカーですが、ポーランドでは目立つこと、目立つこと!
今回、ポーランドの国土の半分ほどを車で走り通しましたが、ポーランドの道路で一番気になったのは、ポーランド人の運転が、どことなく日本人の運転に似ているということです。皆さん、マナーがいいのです。「譲り合い」の精神が生きています。スペイン、イタリア、オランダ、ベルギー、ドイツ…とヨーロッパのいろんな道路をクリスと走りましたが、こんな国、初めてです。出発前、クリスの知人から「ドイツナンバーの車でポーランドに行ったらぶつけられるよ~」とか「盗まれるよ~」とか言われたものですが、そんな杞憂がバカバカしくなります。
ポーランド人ドライバーの皆さん、車線変更や左折の時など、あり得ないような場所で笑顔で譲ってくれます。また、ドイツではついぞ見たことのない「ダブルウインカーによる謝意の表明」、ポーランドでは当たり前のようで、まるで日本の道路を走っているみたい。ドイツ流運転に慣れているクリスは「なんだあいつ、割り込んできた上に煽ってるのか?」なんて反応していましたが、「違うわよ、あれは入れてくれてありがとうっていう意味なのよ!日本でも同じだから。」と説明すると、「何て礼儀正しい人たちなんだ!」と感動していました。
ちなみに、こんな礼儀正しいポーランド人ドライバーたちの中に入れば、ドイツ流運転しかしたことのないクリスの運転はまるで暴走運転。ドイツでは、「譲ってくれる」なんて誰も期待していないので、せっかく譲ってくれているのに「なんであいつ止まってるんだ?」そして「譲ってあげる」なんて感覚で走っていたら、ドイツの道路では追突されまくりなので誰も譲りません。その代わり、規則通りに走るので、自分が優先だとわかっていたら、周囲の状況などお構いなしに猛スピードで突進。…ドイツだと、これでいいんですが…もう一つの運転マナーの良い国、日本の道路事情を知っているわたしが助手席から「あーせい、こーせい」と指示を出し、なんとか横のドイツ人の暴走運転を制御していましたね(笑)。
さて、上のペンションの宣伝のために道端に置かれたトラックが、ポーランド旅行最後の写真になります。
ドイツとの国境付近に近づいたのは、既に暗くなってから。クリスがしみじみこう言いました。「ポーランド人、優しかったね。ドイツ人に対しても、日本人に対しても、何の偏見もないようだった。“ポーランド人は何でも盗む”とか、ドイツ人の方がよっぽど偏見まみれで、恥ずかしい限りだよ。実は行く前、本当に盗難に遭ったらどうしようとか、戦争のことで喧嘩を吹っ掛けられるんじゃないかとか、ちょっと怖かったんだけど、行って本当に良かった!こんないい国が隣にあったなんて、全然知らなかった。偏見って、恐ろしいね。」
わたしは日本のことを思い出していました。
日本とは、歴史も文化も似ても似つかぬ国、ポーランド。なのに何故か、日本と同じ臭いがするのです。それは、「この国が故郷だったら、どんな形ででも愛さずにはいられないだろう!」という臭い。海外に住んでいて出会う日本人って、わたしも含めて、みんな日本に対して並々ならぬ執着心というか、愛着を持っています。会話の中に、「日本」という単語が出てくると、非常に敏感に反応します。そして少しでも誰かが日本のことについて知りもしないのに批判的なことを言うと、気分を害して必ず反論します。日本と、他のアジアの国をごっちゃにされることについても敏感です。これは、どんな職業・思想を持つ人でも例外なく同じです。ドイツで出会う他の外国人で、こういう感覚を持った人たちは、わたしが知る中ではポーランド人だけです。
その秘密が、今回初めてこの国を見て、少し、わかったような気がしました。