嫁いで行く家具さん達 9

この彫りが美しいドローリーフテーブルは、今月末に嫁いで行きます。
このテーブルを選んで下さったのは、今年1年生になる元気な男の子のいる若いご夫婦です。
まだ、幼稚園に入園する前のいたずら盛りのR君と共に、おっとりとした柔らかな雰囲気のHさんがクレマチスを訪れて下さってからもう4年近くになります。
あの頃は、良く動き回る元気なR君を追いかけるのに一生懸命で、「なかなかゆっくり見られないです。一人で来なければ無理です。」とおっしゃっていたHさんです。が、久しぶりにママと来てくれたR君はほっそりと背も伸びて、凛々しい少年になっていて、「こんにちは!」とニッコリ。
「まぁ!ずいぶん背が伸びて。」と、こちらはばーばの気分で、嬉しくなってしまいました。

天板を左右に広げることが出来るドローリーフテーブルは、普段は閉じて中央のテーブルのサイズで使用し、来客時に人数に合わせて、片側だけ引き出したり、両サイド引き出して広く使用したりできる便利なテーブルです。
ヴァルボスの脚は美しくて全体にどっしりとしているのでぐらつくこともなく安心です。
ですが、アンティーク家具のこの美しい木目や、透明感のある美しい艶は魅力であると同時にちょっと厄介な面もあるのです。
無垢材をなんども何度もニスを塗ってはペーパーを当てて表面を仕上げて行くのですが、この昔から使用されているニスは水分に弱いという特徴ががあります。
それで、私としてはテーブルをお買い上げ下さるお客様がお若い家族の場合は特にあれこれ説明させていただくのです。
「水分にはお気をつけ下さいね。濡れたままにしておくとニスが白く変色してしまいます。」
「はい、濡れたものは置かないのね。」
「湯呑やマグカップも熱いと白い輪ジミが出来てしまいます。」
「はい、布のソーサーをつくろうかな。」
といった会話のあと、
「やはり、これ買います。」
と決めて下さって、(しつこくてごめんなさい)ほっとするのです。


今回、このテーブルにはセットの椅子はなくてテーブルのみで入荷していましたから、Hさんはこのハイバックチェア2脚を合わせることに。午後の陽ざしの中で撮影しましたので(単に写真を撮るのが下手なのですが)優しい桃色のモリスの生地の色が上手く出ませんでしたけれど。
「背もたれが高くてどっしりしてシンプルなのがいいです。」
と、Hさんは迷わず決めていらして、ご自分の決定に満足そうに微笑んでいらっしゃいました。

これからこのテーブルを囲んで、Hさんご夫婦とR君の新居での楽しい暮らしが始まります。
まだ小さな育ち盛りのお子さんのいらっしゃるお宅ですから、慌ただしい毎日だとは思います。ですが、あのドローリーフテーブルを選んで下さったHさんです、毎日を丁寧に暮らして行かれるのでしょう。
若いHさんご家族に幸多かれと願っています。