ドイツのクリスマスマーケット
日は、刻一刻と短くなり、遂には午後四時頃から翌八時頃まで街は闇に包まれます。空気は冷たく、毎日雨や霙が降り、じめじめとして、昼でも深い霧が立ち込めます。空はどんより鉛色に曇ったまま、まるでもう二度と晴れることはないのでは?と思うほど、重苦しく家々の屋根にのしかかります。霧なのか、雨なのか、それとも霙なのか、外を歩くたびに、コートはじっとり冷たく濡れます。…そして、空が一段と重苦しく、湿った空気がまるで氷の刃物のように冷たく感じられるある日、雨や霙が最初の雪に変わります。
その年によって違いますが、11月末にはあっという間にこんなふうになることもあります。
![CIMG1441_convert_20111121212044[1]](https://blog-imgs-47-origin.fc2.com/a/n/t/antiqueclematis/201111220408435f9.jpg)
雪が降ると、あまりに寒いので、むしろ温かく感じます。そして雪が降ると、あまりに暗いので、かえって明るく感じるのです。
雪と氷に閉ざされて、周りは一層、孤独な静寂に包まれます。
そんな陰鬱で、暗く、重苦しい季節に真っ先に考えることは、大切な人のことです。そしてこの季節、ドイツ人が何よりも先に大切な人と行きたいと考えるのは、Weihnachtsmarkt(ヴァイナハツマルクト)、クリスマスマーケットです。11月末になると、ドイツのありとあらゆる街の広場に小さな屋台が立ち並びます。この市が立つと、屋台へ向かう人々で、街は一気に活気付きます。
![CIMG1456_convert_20111121212505[1]](https://blog-imgs-47-origin.fc2.com/a/n/t/antiqueclematis/20111122043036281.jpg)
屋台では、色とりどりのクリスマスの飾り物や、Glühwein(グリューヴァイン)という温かい薬味入りのアルコール、そしてLebkuchen(レープクーヘン)という伝統的なお菓子などが売られています。手作りの民芸品や、伝統的なくるみ割り人形などもクリスマスマーケットの定番です。
![CIMG1425_convert_20111121193806[1]](https://blog-imgs-47-origin.fc2.com/a/n/t/antiqueclematis/20111122045455f7b.jpg)
街を歩くと、そこらじゅうからレープクーヘンとグリューヴァインの甘い香りが漂ってきます。寒いから、大切な人と腕を組んで、マーケットの賑わいへ。空は相変わらずどんよりと鉛色。でも、地上は屋台の明かりとクリスマス飾りの輝きで光に満ち溢れています。
ざくざくと、雪と氷を踏みしだく足音、プレゼントを選ぶ人々のひそひそ声、立ちこめる屋台の湯気、人々の吐く白い息、教会前の巨大な樅の木と、この世で最も大切な人と過ごす聖夜への喜び…
![CIMG1424_convert_20111121193359[1]](https://blog-imgs-47-origin.fc2.com/a/n/t/antiqueclematis/20111122050447c34.jpg)
この、温かく、静かで、どことなく神聖な、愛に満ちた雰囲気は、ドイツ語圏のクリスマスマーケット独特のもの。最近では、他の国々からも知られるようになり始め、例えば海を隔てたイギリスでも、ドイツ風のクリスマスマーケットが毎年開催されるようになり、ドイツ人留学生の冬場の良いアルバイト先を提供しています(笑)。
そして日本でも、近年ドイツのクリスマスマーケットで売られている飾りやおもちゃを目にする機会が増えてきました。
母の店、クレマチスでも、クリスとわたしが選んだドイツのクリスマス小物が徐々に増えています。どことなくなつかしく、見ているとなんだか切ない気分になってくるドイツのクリスマス小物達…。「この一年、いろいろあったけれど、今年のクリスマスも、大切な人、家族と過ごせますように!」そんな祈りが籠っているようです。