ユダヤ人とドイツ人

ドイツには、中世の面影を残す小さな街がたくさんある一方、近・現代史の暗い影を残す街もあります。…ベルリンはその代表。現在では観光名所になっているブランデンブルク門は、二十数年前までは鉄条網に囲まれ、東西冷戦の象徴でした。今、クリスとわたしが住んでいるアパートのすぐ裏には、ベルリンの壁が聳えていました。その冷戦時代の前には、ヨーロッパ史に未だに深い傷を残す、ナチス政権の時代があります。ベルリンは、このナチス政権の中心であり、ヨーロッパ人にとって、ベルリンという名前は未だにナチス政権時代の恐怖を呼び起こすものでもあるのだそうです。

(ベルリンには、ナチス時代を彷彿とさせる建物が今でもたくさんあります)
CIMG2004_convert_20120220034924[1]

そんなベルリンで働き始め、クリスが職場で知り合った友人は、一目でわかるユダヤ人。見た目だけでなく、話し方から性格から何もかもまるで絵に描いたようなユダヤ人で、しかも「ユダヤ人の銀行家」ときている、存在だけでまるで映画の一幕のような人物です。

ユダヤ人に対する一般的な「先入観」をそのまま体現しているようなものすごい皮肉屋で、嫌味やブラックジョークばっかり言っているけれど、ちょっと話せば実はものすごく頭のキレる人なんだということがわかるのです。

例えば、クリスの父方の親戚のようなヴェストファーレンの田舎っぺも、しょっちゅうブラックジョークを言うので有名ですが、彼らのジョークって、ヤマなしオチなしイミなし(アレ、何かみたい!)で、聞いていてもイライラするだけということが多いのですが、ユダヤ人の彼のブラックジョークは全然違うんです。あまりに的を射ているのでイラっとくる前に思わず笑ってしまう。しかも、そのジョークに対して嫌味で返せば、あっさり自虐ネタに切り替えて一緒に笑える頭のキレも持ち合わせているのです。

さてその彼、実は大の日本好きなのです。日本や日本文化に対する知識も相当あって、その辺りがクリスと気が合う理由のようなのですが、「なんだよ、俺が一生に一度だけでいいから日本に行って、日本食の食べ過ぎで腹壊して死ねたらこれ以上の幸せはないって思ってるっていうのに、オマエは日本人の嫁さんと年に二度も三度も里帰りだと!?なんで神様はドイツ人にばっかり贔屓するんだよ!」なんて言うのです。

クリスとは、同じ会社の同期なのですが、クリスの勧めで、クリスの通っている日本語クラスに一緒に通い始めたのだそうです。今では「クリスは俺にとって一番理解しあえるいい友達だ」とわたしに言うほど、仲良くなっているのです。

その彼、ルーツはウクライナ系のユダヤ人。かつてナチスドイツがウクライナに攻め入った際、まだ十代だったお祖母さんがホロコーストの恐怖を経験したそうです。親衛隊の銃殺隊に囲まれ、あわやというところを、たまたま通りかかったドイツ軍の将校が助けてくれて、命拾いしたそうです。
まるでアカデミー賞の某映画のような話ですが、ヨーロッパに住んでいるユダヤ人の多くは、家族の誰かのこうした壮絶な経験と命拾いのエピソードを子供の頃から聞いて育っているのだそうです。

一方、ドイツ人の方も、子供の頃から学校でこうした凄惨な歴史を事細かく教えられている上、やはり家族の誰かが戦争中に軍隊にいたと言う話を聞いて育っているので、クリスも、最初、彼とどう接していいのかわからなかったそうです。

それが、お互い日本が好きだということがわかったら、すぐに意気投合したのだとか。
ユダヤ人とドイツ人、若い世代が、何故か(笑)日本をキーワードに仲良くなれたというのは、なんとも面白い現象です。

テーマ : ドイツ生活
ジャンル : 海外情報

sidetitleプロフィールsidetitle

クレマチ店主(母)/アコ(娘)+クリス(娘婿)

Author:クレマチ店主(母)/アコ(娘)+クリス(娘婿)
はじめまして!
アンティークショップ「クレマチス」(http://antique-clematis.sakura.ne.jp)店主の娘、アコです。

日本の古いものは大切に、でも、新しいもの・異質なものも寛容に受け入れる…そんな母の元、小さいころから日本舞踊を習い、現「クレマチス」店舗である祖母の古い日本家屋で、着物や日本の古いものにたくさん触れる一方、ピアノや外国語を習わせてもらったり、父の趣味であるクラッシック音楽や西洋美術を身近に触れる日々を送ってきました。

そんな両親の教育が功を奏し…いや、仇となり(?)、実生活にはあまり役に立たない比較文化分野で大学に居残り、これまたあまり役に立たないドイツ語だけペラペラに。おまけに語学を通して若くてイケメンな(笑)ドイツ人の夫と出会ってしまい、海外に嫁ぐという親不孝っぷり。

そんな娘を、ずっと温かく見守ってくれていた母。そんな母が、「古いものを大切にする喜びを、少しでも多くの人と分かち合いたい」という純粋な気持ちで、亡き祖母の家で始めた小さなアンティークショップ。元々、ずっと苦楽を共にした姑である祖母の家を、大好きなアンティークに囲まれた素敵な空間にしたい…という素朴な思いから始めたこのお店が、あれよあれよという間にいろいろなご縁を引き寄せて、母はいつの間にか、昔夢見たアンティークショップの店主になってました。

「古き良きものに洋の東西はない。和と洋は、互いを引き立て合う良きパートナーになれる!」…母が「クレマチス」で体現している価値観は、わたしたち夫婦のモットーでもあります。

このブログでは、そんな母と二人三脚で、「クレマチス」のお店の情報と併せてドイツの生活・風物について少しずつ紹介していきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。

sidetitleカテゴリsidetitle
sidetitle最新記事sidetitle
sidetitle月別アーカイブsidetitle
sidetitle検索フォームsidetitle
sidetitleリンクsidetitle
sidetitleブロとも申請フォームsidetitle

この人とブロともになる

sidetitleQRコードsidetitle
QRコード