ユダヤ人とドイツ人
(ベルリンには、ナチス時代を彷彿とさせる建物が今でもたくさんあります)
![CIMG2004_convert_20120220034924[1]](https://blog-imgs-35-origin.fc2.com/a/n/t/antiqueclematis/20120220041512e88.jpg)
そんなベルリンで働き始め、クリスが職場で知り合った友人は、一目でわかるユダヤ人。見た目だけでなく、話し方から性格から何もかもまるで絵に描いたようなユダヤ人で、しかも「ユダヤ人の銀行家」ときている、存在だけでまるで映画の一幕のような人物です。
ユダヤ人に対する一般的な「先入観」をそのまま体現しているようなものすごい皮肉屋で、嫌味やブラックジョークばっかり言っているけれど、ちょっと話せば実はものすごく頭のキレる人なんだということがわかるのです。
例えば、クリスの父方の親戚のようなヴェストファーレンの田舎っぺも、しょっちゅうブラックジョークを言うので有名ですが、彼らのジョークって、ヤマなしオチなしイミなし(アレ、何かみたい!)で、聞いていてもイライラするだけということが多いのですが、ユダヤ人の彼のブラックジョークは全然違うんです。あまりに的を射ているのでイラっとくる前に思わず笑ってしまう。しかも、そのジョークに対して嫌味で返せば、あっさり自虐ネタに切り替えて一緒に笑える頭のキレも持ち合わせているのです。
さてその彼、実は大の日本好きなのです。日本や日本文化に対する知識も相当あって、その辺りがクリスと気が合う理由のようなのですが、「なんだよ、俺が一生に一度だけでいいから日本に行って、日本食の食べ過ぎで腹壊して死ねたらこれ以上の幸せはないって思ってるっていうのに、オマエは日本人の嫁さんと年に二度も三度も里帰りだと!?なんで神様はドイツ人にばっかり贔屓するんだよ!」なんて言うのです。
クリスとは、同じ会社の同期なのですが、クリスの勧めで、クリスの通っている日本語クラスに一緒に通い始めたのだそうです。今では「クリスは俺にとって一番理解しあえるいい友達だ」とわたしに言うほど、仲良くなっているのです。
その彼、ルーツはウクライナ系のユダヤ人。かつてナチスドイツがウクライナに攻め入った際、まだ十代だったお祖母さんがホロコーストの恐怖を経験したそうです。親衛隊の銃殺隊に囲まれ、あわやというところを、たまたま通りかかったドイツ軍の将校が助けてくれて、命拾いしたそうです。
まるでアカデミー賞の某映画のような話ですが、ヨーロッパに住んでいるユダヤ人の多くは、家族の誰かのこうした壮絶な経験と命拾いのエピソードを子供の頃から聞いて育っているのだそうです。
一方、ドイツ人の方も、子供の頃から学校でこうした凄惨な歴史を事細かく教えられている上、やはり家族の誰かが戦争中に軍隊にいたと言う話を聞いて育っているので、クリスも、最初、彼とどう接していいのかわからなかったそうです。
それが、お互い日本が好きだということがわかったら、すぐに意気投合したのだとか。
ユダヤ人とドイツ人、若い世代が、何故か(笑)日本をキーワードに仲良くなれたというのは、なんとも面白い現象です。