教会オルガニスト

先日、ミサの後に神父さんと話していて趣味の話になった時に、クリスがついつい「妻は日本舞踊が踊れるしピアノも弾ける…」みたいな自慢を始めました。すると、神父さんがぱっと顔を明るくして、「ピアノが弾けるのか!それはいい!是非、ミサの時のオルガンを弾いて欲しい」と言い出しました。なんでも、専属のオルガニストがしょっちゅう演奏旅行に行くので困っていたのだとか…。

でも、ピアノは弾けてもパイプオルガンなんて触ったこともありません。それにオルガンは聖歌の伴奏をするだけでなく、聖体拝領をはじめ様々な儀式のバックミュージックも務めるので、まさにミサの進行を左右する重大な存在…そんな、弾いたこともないような人に務まるんでしょうか。

とはいえ、神父さんには是非是非!と頼まれるし、クリスが勝手に自慢しちゃうから、今更「やっぱり弾けません」とは言えないし…で、仕方なく引き受けることになりました。

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ドイツで教会のオルガンを弾くというのは、実はすごく名誉なことらしく、クリスは勝手に大はしゃぎ。「バッハもベートーベンも、元はみんな教会オルガニストだった!」というのです。

確かに、ドイツの教会は、どこも日本にあったら「大聖堂」と言われておかしくないほどバカでかく、信者の数も半端ではありません。だからその大合唱を支えるオルガンは、まさに責任重大です。

…これはヤバい(汗)
神父さんと約束して、水曜日のお昼に早速練習させてもらいに行きました。

考えてみたら、誰もいないネオゴシック大聖堂のパイプオルガンを自由に弾けるなんて、なかなか経験できないことかもしれません。

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一通り練習した後で、ついつい誘惑に勝てなくなって「映像の20世紀」のテーマとゼクトバッハを大音響で弾いちゃいましたよ。
ドイツの大聖堂のパイプオルガンでこれ弾いたの、もしかしてわたしが初めてじゃないでしょうかっ!←

それにしても、聖歌の伴奏っていうのは意外に難しいです。
楽譜だけ見ると非常に簡単で、初見でもサラッと弾けるレベルなのですが…リズムの取り方、タイミングが非常に難しいです。なんというか、独特のリズムがあって、一般のクラッシック音楽とは異質です。

これは家で練習した方がいいかな…と、楽譜を家に持ち帰って家のピアノで練習していたところ、それを見ていたクリスがふと、言ったのです。「君はオルガンが弾けるけれど、僕は何もできない。教会のために、僕に何ができるだろうか?…と考えたら、国家資格を持つ元大工として、教会の庭の整備や建物の修理なんかをやらせてもらえないか…って、神父様に頼むことにしたよ。」

その言葉を聞いて、ふと、思いました。クリスは今でこそ銀行員ですが、わたしと出会ったころは国家資格を持つ大工職人でした。そして、クリスの本当の名前はクリスティアン…クリスティ、つまり、キリストのこと。キリストという名の元大工…。イエスは元大工だった…。その時、こんなことを思い出しました、そう、この人と出会ったとき、思ったのです、「この男が存在するなら、神様は絶対に存在する!」と。彼と出会った日の感動、そして、彼の存在の中に神の存在を見出したのだということ。だから彼のプロポーズを受けたのだということ。日々の生活の中で忘れかけていた彼への純粋な愛と信仰心が、再び蘇るのを感じました。

その、静かな感動に浸りながら、もう一度、聖歌を弾いてみたら…あら、不思議。これまで異質だと感じていたリズムが、すっかり馴染みの呼吸のように感じられ、すんなり演奏できたのです。

…そうか!このどんな西洋クラッシックとも異質な独特のリズムは、信仰のリズムだったんだ…。

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そんなわけで、水曜日の朝ミサでオルガニストデビューしました。

ミサの後で、神父さんがわざわざ朝食に招待してくれたので、一緒に遅い朝食を取り、コーヒーを飲んで、おしゃべりしましたが、この神父さん、本当に親切で面白い!

「もしよかったら、一緒に朝食でもどうですか?」と誘われたので、たまたまそのあと用事がなかったからお呼ばれされたけれど、わざわざわたしのために、出来たてのパンや蜂蜜を用意していたのだとか…断っていたら、どうするつもりだったんだろう。。

しかも帰り際に「今日は来てくれて本当にありがとう!こんな美しい女性と二人っきりで食事する機会なんてめったにないんでね。」と、またまた恒例のリップサービス。

この神父さんが喜んでくれるなら、大変だけど、オルガン弾き、がんばってみようかな…と。

ドイツ語で、「才能」のことを「Gabe」と言いますが、この言葉の語源は「世の中に役立てるために神から与えられたもの」という意味です。わたしに少しでも音楽的「才能」があるのなら、初めて人の役に立つことができる才能、まさに、Gabeだな…と思います。

テーマ : ドイツ生活
ジャンル : 海外情報

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クレマチ店主(母)/アコ(娘)+クリス(娘婿)

Author:クレマチ店主(母)/アコ(娘)+クリス(娘婿)
はじめまして!
アンティークショップ「クレマチス」(http://antique-clematis.sakura.ne.jp)店主の娘、アコです。

日本の古いものは大切に、でも、新しいもの・異質なものも寛容に受け入れる…そんな母の元、小さいころから日本舞踊を習い、現「クレマチス」店舗である祖母の古い日本家屋で、着物や日本の古いものにたくさん触れる一方、ピアノや外国語を習わせてもらったり、父の趣味であるクラッシック音楽や西洋美術を身近に触れる日々を送ってきました。

そんな両親の教育が功を奏し…いや、仇となり(?)、実生活にはあまり役に立たない比較文化分野で大学に居残り、これまたあまり役に立たないドイツ語だけペラペラに。おまけに語学を通して若くてイケメンな(笑)ドイツ人の夫と出会ってしまい、海外に嫁ぐという親不孝っぷり。

そんな娘を、ずっと温かく見守ってくれていた母。そんな母が、「古いものを大切にする喜びを、少しでも多くの人と分かち合いたい」という純粋な気持ちで、亡き祖母の家で始めた小さなアンティークショップ。元々、ずっと苦楽を共にした姑である祖母の家を、大好きなアンティークに囲まれた素敵な空間にしたい…という素朴な思いから始めたこのお店が、あれよあれよという間にいろいろなご縁を引き寄せて、母はいつの間にか、昔夢見たアンティークショップの店主になってました。

「古き良きものに洋の東西はない。和と洋は、互いを引き立て合う良きパートナーになれる!」…母が「クレマチス」で体現している価値観は、わたしたち夫婦のモットーでもあります。

このブログでは、そんな母と二人三脚で、「クレマチス」のお店の情報と併せてドイツの生活・風物について少しずつ紹介していきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。

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