アンティークランプの魅力

ミューラー家の兄弟姉妹は10人で、全員がフランスロレーヌの北西部カウハウゼン村で生まれたと記されています。
彼らの名は1866年生まれの長男エミール、アンリ、二コラ(通称カミーユ)、ジャン、オーギュスト、ピエール、デジレ、ヴィクトール、カトリーヌ、末の1883年生まれのウージェーヌでした。
カルハウゼン村は今も窯の芸術(ガラス製品、クリスタル製品など)が行われている地域の中心部に当たる場所だそうです。
彼らのうちエミール、カミーユ、ジャン、オーギュスト、デジレの5人はガレのクリスタル製作所が1894年に創立された時にガレのもとに入り、その後独立して自らの工房をつくったのです。


1895年、アンリ・ミューラーはナンシーの南西20キロほどの所にあるロレーヌ公の旧都リュネヴィルに手工業生産のアトリエを開きました。そこにエミール、オーギュスト、ピエール、デジレが合流し、デザイン画家をしていたカトリーヌと末っ子のウージェーヌも加わったということです。
ミューラー兄弟のアトリエはその後第一次世界大戦で中断され、いろいろな段階を経て、1930年の経済危機のために破綻してしまいます。1935年には彼らのクロアマールの工房も火事で焼失してしまいます。そのころまでには多くの兄弟がなくなっていますが、デジレだけが1952年に息を引き取るまで独自の作品を制作し続けました。
私たちが手にするミューラーの作品に書かれているエナメル彩のサインは、「ミューラー兄弟、リュネヴィル」という意味です。


ガレに続く世代に属するミューラー兄弟。
彼らの作品はガレのようにあくがあるほどの強い個性を持ったものとは違い、どんな空間にもまるで以前からそこにあったように溶け込んで、優しい灯りをともしてくれます。

そして技術面から見ても美学面から見てもその偉大なガラス作家と同じくらい厳密な要求に支配され、製品はそれによって一貫してナンシー派のガラス製品と同じ質の高さを維持していたと言われています。



