命のスープ
市内の実家で兄と暮らす母が、体調を崩して寝込んでいます。昨年のひどい帯状疱疹の痛みがようやく癒えた春先に、今度は玄関で転倒骨折してしまいました。
その母に、毎朝野菜のスープを作って持って行っています。

漸く骨折の痛みも治まり、歩行練習を始める時期になってもなかなか体力が戻らず、食欲はさらになく、気力がもどらないのです。
80代になっても車を運転して友人たちと近所の喫茶店に行ったり、旅行にもよく出かける明るい母でしたのに。
帯状疱疹の時は近くに住む姉が
「私が見に行ってるから大丈夫。」
と言ってくれて、私は週に1度か2度、夕飯のおかずを兄の分と二人分作って差し入れていました。
が、今回は明らかにおかしいのです。「生きる力」がないのです。
兄も姉も色々工夫してあれこれと食べさせようとしてもほとんど食べないのです。
体力も落ち、やせる一方です。
そして
「そうだ、野菜のポタージュスープを作ってみよう。」
と思いついたのです。
人参のポタージュスープ。人参の薄切りと玉ねぎの薄切り。玉ねぎはほんの少し。これを少しのバターで柔らかくなるまで炒めてブイヨンでコトコト煮込んで裏ごし。あとは牛乳で好みにのばせば出来上がり。
これだけのことですが、なぜか、このスープだけは好んで飲んでくれるのです。
時にはそら豆のスープにしたり、カボチャのスープにしたり。トウモロコシを茹でて、コーンスープにしたり。枝豆のスープも作ってみましたけれど、「美味しかった。ごちそうさま。」の言葉が出るのは、人参スープの時だけです。
このスープ以外はお医者様から出されている「ラコール」という栄養剤の飲み物とほんの少しカステラや兄が切ってあげるメロンを少しなど。だから母にとってこのスープは「命のスープ」です。
明日もまた「命のスープ」を持って行ってきます。