フランス小旅行
ママがお店がんばっている間にわたしたちはというと、ちゃっかりパリに遊びに行っていました。

パリにはこれまで二度行ったことがあり、一度目は大学の学部時代の研修、二度目は仕事だったのですが、どちらも純粋な観光目的ではなかったので、印象はいまいち薄く、やたらナンパされたのと、パリっ子が全然英語を話さない…ということくらいしか覚えていませんでした。

でも、今回は初めて純粋な観光、しかも、旦那サマと一緒です!
…で、思ったのが、やっぱりパリは「愛の街」だ、ということです。研修や仕事で行くのと、好きな人と行くのでは全然違うパリの姿を見ることができます。
今回宿を取ったのは、下町界隈のサン・ジェルマン・デ・プレ。その昔、哲学者のサルトルがコーヒー一杯で何時間も粘ったというカフェがあり、パリの新進気鋭の芸術家、思想家、作家、歌手たちの集まる界隈でした。
これが、ホテルからの眺めです。

パリは物価が高いと聞いていましたが、一泊80ユーロも払って、ホテルに入ってみたら、ボロボロの安宿!天井は低いし、そこらじゅうミシミシ、ガタガタ。もちろん、隣の声も丸聞こえ。夜なんて、酔っ払いが部屋を間違えて、わたしたちの部屋へ入ろうと入り口でガチャガチャ…もちろん、クリスがつまみ出しましたが(笑)。
でも、この安宿っぷりが、なんだか逆にサン・ジェルマン・デ・プレ気分を盛り上げるんですよね。そして同時にラブラブモードも!うーんやっぱり、パリって愛の街。
今回の旅の目的は、主に「着倒れ」「食い倒れ」。
早速、ヨーロッパ一の靴売り場があるという巨大デパート、ラ・ファイエットに行ってみました。

十二月の頭とはいえ、今年のヨーロッパは暖冬で、ベルリンでもパリでもいまいちクリスマス気分は盛り上がっていないのですが、流石に高級デパートの中はクリスマス一色です。

これ、教会の天井ではありませんよ。デパートの天井です。
個人的な好みを言えば、規模は劣るかもしれませんが、ベルリンの高級デパートKDWの方がわたしには楽しかったです。
さて、このデパートを出て、ブティックめぐりをしていたときにちょっとした事件が…!
下着ブティックでバスローブとストッキングとパンティセットを三つほど買おうとレジに並んでいたのですが、店員のおばちゃんがわたしの前のお客さんと知り合いだったらしく、個人的な世間話を始めてしまい、延々、20分程待たされ、おしゃべりはまだ終わりそうにありません。わたしの後ろにはいつの間にか長蛇の列ができていましたが、フランス人にとってこんなことは日常茶飯事なのか、誰も文句を言いません。ベルリンだったら、客が皆怒り出してレジのおばちゃんと喧嘩になってもおかしくないのに…。
30分ほど待たされ、さすがに頭にきました。パリではこれが普通なのかもしれないけれど、知ったこっちゃない!ベルリンっ子を怒らせるとこうなるのよ!…と思ったら、次の瞬間、買おうと思っていた商品を床にぶちまけ、ドイツ語で怒鳴っていました。「ちょっとあなたたち!こんな下着のためにいつまで待たせるつもりなの?もう買う気も失せたわ!」ドイツでフランス語を習っていたので多少はしゃべれるのですが、こういうときはフランス語なんてとっさに出てきません。世界一怒鳴るのに適した言語、ドイツ語の威力に勝るものはありません。
傍にいたクリスはというと、「ひぇ、あこがキレた!!」という顔をして、慌ててわたしの手を引いて店から退散。
店を出た後、二人で大笑い。
ただ、この一件以外、嫌な思い出のようなものは一つもなく、むしろ、パリっ子が皆以外にフレンドリーで親切で、英語・フランス語のできる・できないにかかわらず皆すごく礼儀正しいのに驚きました。よくある先入観というか、ステレオタイプのフランス人のイメージだと、フランス人というのは英語がわかっても話さないし、感じ悪いし、観光客に対して不親切だ…ということになっているのですが、まったく逆。むしろ、英語を話さず、感じ悪く、不親切なのはドイツ人の方のように思います。確かにフランス人の方が英語が苦手で、理解できなかったり、片言しか話せなかったりする人が多いのですが、それでもにこにこ、一生懸命理解しようと耳を傾けてくれます。

そして、これはある意味先入観の通りかもしれませんが、男女関わらずものすごい勢いでナンパされます!
面白かったのが、ビストロに入ってわたしが先に席に着き、クリスがカウンターで注文をしていた時、店に入ったときからにこにこわたしを見ていた若い男がすかさずわたしの横に座って「美しい人、どこから来たの?」と声をかけてきました。…クリスが見たらこの人、ぶん殴られるだろうに、やばいなこれは…と思っていると、いつの間にか男はささっと去っていき、それと入れ替わりにクリスが赤い顔になって戻ってきて「今、信じられないようなことが起こった!」と言うのです。なんでも、カウンターのウエイトレスに口説かれまくり、「結婚している」と言って指輪を見せても怯むどころか「いいじゃない、一晩くらい…」と攻めに攻められ、わたしの横にちゃっかり座っている若い男に気づくどころではなかったようです。
それ以外にも、通りすがりに投げキスされたりウィンクされたり、レストランのウエイターやウエイトレスに口説かれたり、夫婦そろってちやほやされまくってしまいました。
気を取り直して、旅のもう一つのテーマ、「食い倒れ」について。

こちらは今回の旅行で一番高かったレストラン。四つ星です。

有名なエスカルゴもしっかり食べてきました。
でも、一番美味しかったのが、星ゼロのこのレストラン。

サン・ジェルマン・デ・プレの人気のない裏路地にあり、一見「本当にこんなところにレストランがあるの?」というような寂れた路地裏にぽつんと立っています。オーナーは地元の老夫婦で、お客さんもほぼ、地元の人だけ。殆どの人が常連さんのようです。それが、このオーナー夫婦も地元の常連さんたちも、みんな驚くほど親切で温かいのです。みんなほとんど英語は通じませんが、観光客とわかると、みんなで寄ってたかって拙い英語で料理の説明・注文の手引きをしてくれます。わたしは片言のフランス語で、クリスなんて、ほぼ、ドイツ語のみで話してそれでも意思疎通ができていました。

そして、このお店で食べたこのクレーム・ブリュレ、今まで食べたありとあらゆる食事の中で一番美味しかったです!
さて、今回の旅の裏目的が、ヨーロッパ式高級キャバレーの「ムーラン・ルージュ」でフレンチカンカンを見ること!

ムーラン・ルージュとは、フランス語で「赤い風車」という意味で、その名の通り、パリの歓楽街にあるその建物は、赤い風車が目印になっています。ヨーロッパには、日本のキャバクラように、男性がホステスのお姉さんたちと楽しくお酒を飲む「だけ」の風俗店はありません。歌や踊りのショーを見せるキャバレーや、お酒を飲んで踊るクラブなどは、男性だけが楽しむというよりもむしろ、男女が出会う場であったり、カップルが楽しむ場所だったりします。純粋に男性のみが楽しむ風俗営業と言えば、ヨーロッパではいわゆる売春宿になってしまいます。
このムーラン・ルージュも、現在では観光客向けのショーと化していて、お客さんは殆どがカップルです。キャバレーとはいえ、高級なショーということで、お客さんたちは皆、バレエやオペラにでも行くようなお洒落な格好で実に来ます。…ということで、わたしも…。

このムートンコートは一応フランス製なんですよ!

こちらはムーラン・ルージュの客席から。開演中は撮影禁止です。席を予約すると、シャンパンハーフボトルが付いてきます。
ちなみに、ムーラン・ルージュは美術マニアにとっても必見です。こちらはこのムーラン・ルージュの踊り子たちをモデルにしたロートレックのポスター群。こんな風に、名作がごく普通に壁に掛けられています。

そしてこちらは、ルネ・ラリックの香水瓶。「ムーラン・ルージュ」という香水のために特別に作られたものだそうです。

でも、ショウの内容はしっかり大人向け。お姉さんたちはみんなおっ○い丸出しなので、見に行くならオトナになってから、ですね。

パリ滞在の最後の日は、のんびりセーヌ川クルーズ。船の上からしか見えないパリのもう一つの顔を見ることができます。

こちらは番外編の、パリの自由の女神。本当にパリにあるという証拠に、後ろにしっかりエッフェル塔を納めておきます。

そしてこちらが今回は行かなかったオルセー美術館。今回、美術館、博物館系は一つも訪問しませんでした。というのも、ママがずっと「パリの美術館・博物館に行きたい」と言っているので、ママと行く時のためにとっておいたのです。
ママ、来年も是非またヨーロッパに来てね!