フランクフルトのパルメン・ガルテン

久しぶりにドイツからの投稿です。
今までアパート暮らしでしたが、去年購入した家は、本格的な客室完備。そこで日本の両親や弟などに再三「遊びに来てね!」と言っているのですが、皆忙しいようで誰一人来てくれません。そこで、彼らが絶対に読んでいる「はず」のこのブログで、しばらく集中的にドイツのお国自慢を書いて旅情を誘う作戦に出てみようと思います。
まずは我が街自慢から。
現在わたしたちが住んでいるのは、ドイツの丁度真ん中(若干南西寄り)に位置するヘッセン州という所の金融都市、フランクフルトです。この街の歴史は古く、丁度日本で平安遷都が行われた794年、初めて、カール大帝の手紙の中に名前が出てくるそうです。その後も神聖ローマ帝国の皇帝選挙地に定められ、ドイツの歴史に度々登場しますが、当時から現在まで、フランクフルトは基本的には商業で力を付けた市民の街として発展して来ました。そのため、ヨーロッパの歴史上、普通は王侯貴族や有力教会などの威光で創建されてきた施設…例えば大学、オペラ座などが、この街では例外的に市民の主導により、市民の投資を基に創建されてきました。
ここで紹介する「パルメン・ガルテン」もその一つです。

直訳すると、「パルメン・ガルテン」とは「椰子庭園」のことです。

ということで、確かに椰子もあるんですが、19世紀、椰子を始め、エキゾチックな南国の植物を集めて展示する植物園がヨーロッパ各都市で流行し、その時に作られた植物園のことをこう呼んでいるのです。当時のこうした植物園は、専ら王侯貴族の趣味が昂じて…というのがよくある創建秘話なんですが、ここはフランクフルトらしく、貴族が集めた南国の植物を市民たちが買い取り、市民の手によって市民の憩いの場になるようにと建設されたそうです。そんな植物園が、現在でも市民の憩いの場として健在です。

目玉はやっぱり、19世紀の昔から変わらず南国の珍しい植物とヨーロッパで触れ合うこと。

サボテンもこの大きさです。

今と違って海外旅行が一部の特権階級の余暇だった時代、ヨーロッパの調協しやすい大人しい自然しか見たことのなかった人々はさぞ感動したことでしょう。

今でこそ観葉植物としてどのオフィスにも置かれているスパティーも、しっかり現地の大きさ・迫力が再現されています。

そして足元には普通にこんなかわいいのが歩いているという徹底ぶり。

温室だけでなく、屋外ではヨーロッパの様々な自然が再現され、市民が思い思いに散策できるようになっています。こんな風に、カモや白鳥、ガンなども放し飼いになっていて、人間と一緒になって草むらをごろごろしていたり、水辺でのんびりしていたり…。
木立に囲まれた芝生の一角は、なんと人間用の昼寝専用施設となっていて、各自思い思いに備え付けの寝椅子に毛布やタオルを敷いてお昼寝できるようになっています。「お昼寝スペース。騒音厳禁!」の看板まで立っています。市民の憩いの場なんだから、市民がゴロゴロしていて何が悪い!という所なのでしょう。
因みに日本の感覚だと、「休みにゴロゴロしてしまった」というのはなんだか一日時間を無駄にしたようで、罪悪感を感じるものですが、ドイツでは、ゴロゴロしなければ休みではない!という感覚のようです。

こんな所でゴロゴロしていたら、まるで自然の中に観光にでも来たような気分になりますが、時々こうして見えるテレビ塔で、ここがフランクフルトのど真ん中だということを思い出します。

さて、こちらはヨーロッパの自然の植物を集めた庭です。

こんな風に、自然を再現したような庭もあれば、これぞ、ヨーロッパ庭園!という庭もあります。

この規模、広さ、なんだか以前二回ほど訪れたことのあるスペインのアルハンブラ宮殿を思い出してしまいましたが、ここが王侯貴族の庭ではなく、庶民が作った庭園だ、ということに、改めて驚かされます。

ヨーロッパ庭園定番のバラも健在です。

ちなみにこの光、午後7時を過ぎています。

夏のヨーロッパはどんどん日が長くなっていくので、ここで時々開かれている「音楽の夕べ」と言われる夜間屋外コンサートも、こんな明るさの中開催されているのです。
さて、今週はその「音楽の夕べ」が開催されるようなので、チケットが取れたら行ってみようと思います。