19世紀ロマンな音楽の夕べ

先回の記事で少し紹介した植物園での「音楽の夕べ」、チケットが取れたので行ってきました。

開演時間は午後7時からなのですが、既に午後5時頃から植物園内の様々な特別展示を見て回ることができるようになっています。

新規オープンしたばかりの「滝のある熱帯庭園」とか、この日一日だけのバラの庭園とか、カカオの特別展とか、そういったものがコンサートチケットを持つ人だけに公開されています。普通の入園チケットでは入れないようです。

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こちらが「滝のある熱帯庭園」。どんな雰囲気かというと、19世紀に建てられたアールヌーボースタイルの温室の建物の中に、エキゾチックな風物への当時の憧れをそのまま保存したかのような、ヨーロッパ人の思い描く熱帯雨林の風景が再現されています。

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水辺に飛び石が幾つかあり、それを辿っていくと人工の洞窟まであります。その洞窟の中には二人掛けのベンチが幾つかあり、洞窟の壁にはアクアリウムが設置され、熱帯魚と水草が展示されています。この暗がり、落ち着き…奥ゆかしい19世紀のカップルたちは、ここでこっそり二人だけになってキスしたりしていたんでしょうか。

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少しでも展示物に身近に触れられるようにと凝らされた工夫と、一方でくつろぎ、安らげる空間を提供しようと凝らされた工夫。まるで現地にいるかのような臨場感と、一見それとは相反するようなアールヌーボーのベンチやテラス。それらが独特の雰囲気を作り出し、そのど真ん中に、コンサート会場があります。

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熱帯の植物なんて、その辺のホームセンターで安価に手に入るようになった現代。家庭や職場に観葉植物として熱帯の植物が置かれているのも普通の光景です。それに、本当に現地の雰囲気を知りたかったら、さくっと飛行機で現地に観光旅行に行ける時代です。例えそんな時間がなかったとしても、テレビを付ければハイビジョンで「熱帯雨林の動植物」特集が放映されています。

こんな時代にわざわざ植物園に来るヨーロッパの人たちって、一体何を見に来ているんでしょうか。この人工の熱帯庭園を歩きながら、ふと、これは植物そのものの展示じゃない。そんな植物が珍しかった時代、そのものの展示なんじゃないだろうか…と思ったのです。

ここにいると、「熱帯の森にいる」という臨場感よりもむしろ、「19世紀のヨーロッパにいる」という臨場感の方が伝わってくるのです。

この熱帯庭園の隣に設置された「カカオ」の展示なんて、正に19世紀ロマンそのもの。チョコレートがまだまだ「贅沢な飲み物」であった時代のヨーロッパ人の興味・憧れをそのまま展示したような空間。「珍しい」本物のカカオの木の展示、原料の展示、原産地の自然や風俗、プランタージュの様子など、コンサートのために着飾ったまま鑑賞していると、19世紀帝国主義のヨーロッパ市民の気分を味わえます。19世紀の製法そのままのココアというのも実演販売されていて、わたしたちも一缶お土産に購入しました。

ちなみに、わたしは仕事帰りだったこともあり、黒のワンピースで会場へ。華やかな熱帯の植物やカラフルなバラの展示の中、黒は失敗だったかもしれません。 他の皆さんはもっとすごい気合の入った花柄やビビッドカラーのサマードレスでした。

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ところでこれは「バラ園」なんですが、これ、「庭園」ではなく「生け花」ですよね。。バラはどれも思いっきり切り花です。しかもくどい…。この辺りがドイツ人の感性なんだと思います。わたしのそれとはちょっと違うかな…と。

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何だか子供の頃のピアノや日本舞踊の発表会の、花束で一杯になった楽屋を思い出します。

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さて、肝心のコンサートの方ですが、会場は温室のど真ん中にあります。

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19世紀に建設されたこちらの建物。天井には、12枚のロマン派的な絵があり、それぞれ12星座を表している…という19世紀の厨二…もとい、ロマンです。

実はこの会場、1970年代にコンサートホールとしては使われなくなり、長らく忘れ去られていたのだとか。そもそもこの植物園、フランクフルト市民が主導になって創設されたもので、それが「王侯貴族の趣味が昂じて…」が大型公共施設設立動機の主流だった当時のヨーロッパでは異例のことだったのですが、市民が主導である分、やはり商業的にうまくいかないとあっさり捨て置かれてしまったりするようです。それが最近、貴族のハノーファー公爵夫人の財力・政治力の助けを借りて40年ぶりに復活したと言うのだから、皮肉なものです。

というわけで、わたしたちが聞いたプレミアム・コンサートは、なんと40年ぶりにこの会場に響く音となります。

曲目はモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、ハイドン、ビバルディの「四季」という王道中の王道です。モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は直訳すると「ある小さな夜の音楽」という意味なので、こういうコンサートにはぴったりなのかもしれません。

ただ、純粋にコンサートホールとしては、植物園は不向きなようで、溢れる植物が音を吸収してしまって全然響きません。演奏はベネチアオーケストラで、とても素晴らしかったのですが…音がかわいそうなくらい植物に邪魔されてました。

でも、植物園や博物館・美術館でコンサート…というのは19世紀に流行った娯楽だったのです。優雅に展示品を見た後、雰囲気に浸りながら音楽を楽しみ、更に休憩中や演奏後に軽く飲み食いしながら展示を楽しむ…そんな平日の夕べが19世紀ヨーロッパのよくある中・上流市民の遊びだったのです。だからコンサートホールとしての機能は二の次だったのかもしれません。

そんな、19世紀ロマンにたっぷり浸った「音楽の夕べ」でした。

テーマ : ドイツ生活
ジャンル : 海外情報

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クレマチ店主(母)/アコ(娘)+クリス(娘婿)

Author:クレマチ店主(母)/アコ(娘)+クリス(娘婿)
はじめまして!
アンティークショップ「クレマチス」(http://antique-clematis.sakura.ne.jp)店主の娘、アコです。

日本の古いものは大切に、でも、新しいもの・異質なものも寛容に受け入れる…そんな母の元、小さいころから日本舞踊を習い、現「クレマチス」店舗である祖母の古い日本家屋で、着物や日本の古いものにたくさん触れる一方、ピアノや外国語を習わせてもらったり、父の趣味であるクラッシック音楽や西洋美術を身近に触れる日々を送ってきました。

そんな両親の教育が功を奏し…いや、仇となり(?)、実生活にはあまり役に立たない比較文化分野で大学に居残り、これまたあまり役に立たないドイツ語だけペラペラに。おまけに語学を通して若くてイケメンな(笑)ドイツ人の夫と出会ってしまい、海外に嫁ぐという親不孝っぷり。

そんな娘を、ずっと温かく見守ってくれていた母。そんな母が、「古いものを大切にする喜びを、少しでも多くの人と分かち合いたい」という純粋な気持ちで、亡き祖母の家で始めた小さなアンティークショップ。元々、ずっと苦楽を共にした姑である祖母の家を、大好きなアンティークに囲まれた素敵な空間にしたい…という素朴な思いから始めたこのお店が、あれよあれよという間にいろいろなご縁を引き寄せて、母はいつの間にか、昔夢見たアンティークショップの店主になってました。

「古き良きものに洋の東西はない。和と洋は、互いを引き立て合う良きパートナーになれる!」…母が「クレマチス」で体現している価値観は、わたしたち夫婦のモットーでもあります。

このブログでは、そんな母と二人三脚で、「クレマチス」のお店の情報と併せてドイツの生活・風物について少しずつ紹介していきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。

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