奇跡の国、ルクセンブルク!

クリスは現在金融専門職としてドイツの銀行で働いているのですが、結構頻繁ににヘッドハンターからお誘いが来るそうです。その中でも目を引くのが、ルクセンブルクというお隣の小さな国からのスカウト。ルクセンブルクって、日本にいると殆ど名前も聞かないような、ベネルクス三国のうちの一国ですが、実はドイツにいてもお隣なのに殆ど話題に上りません。それだけ不穏なニュースが少ないEUの優等生なのかもしれませんが、日本の神奈川県と同じ位の大きさで人口50万人位しかいない小国だというのも存在感の薄い理由かもしれません。唯一、この国の名を聞いて「そういえば」と思い当たることがあるとすれば、それは「一人当たりのGDPが世界一だ」ということです。

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実はルクセンブルク、規模的には小国ながら、フランクフルトがそのまま国になってしまったような金融大国なのです。一人当たりのGDPが世界一なのもそのせいです。だからフランクフルトの銀行マンにとってルクセンブルクからのヘッドハンティングというのは結構ある話なのです。クリスに時々ラブコールをくれる国…ということで、わたしも今まで殆ど知らなかったこの国について、少しずつ興味を持つようになりました。「もしも将来ドイツでまたナチスみたいな政権が誕生したらルクセンブルクに亡命するか…」と冗談を言ったりもしていました。

…ところが、先月9月24日の選挙で外国人排斥と民族主義を掲げる極右政党が大躍進!二大政党に次ぐ第三勢力の地位を獲得し、第二次世界大戦後初めて、ドイツの国会に極右民族主義者が進出する…ということで、マスコミもインターネットも大騒ぎになりました。一大勢力として国会入りを果たしたこの右派ポピュリストたちの人種差別発言やヘイトスピーチが連日そこらじゅうで話題となり、普段政治にまるで関心がないように見えた人たちが突然「実は前々から自分も極右連中の言うことも一理あると思っていたんだ!」と関を切ったように話すようになり、まるでパンドラの箱が開いてしまったような、そんな状況になりました。…これはなんだか冗談で言っていた「ルクセンブルク亡命」が現実味を帯びてきた…かも!?

元々10月頭の連休でどこかに行こうと思っていて、本当は10月3日がドイツの東西統一記念日なので、東ドイツのどこかに行こうと思っていたのです。…が、東ドイツが極右政党の大票田となったというニュースを見て、急遽、行先変更。ホントにいつか移住するかも(!?)…という数パーセント位の可能性も視野に入れて、ルクセンブルクを観に行ってみることにしました。

取りあえず、ドイツ国境にほど近いヴィアンデンという街に泊まってみました。
この街にはこんなお城があります。

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天気が悪いのはアルプス以北のヨーロッパの通常仕様ですのでご了承ください。

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お城の中は博物館のようになっていて、中世の鎧や武器、ルクセンブルク大公家であるナッサウ家の人々が暮らしていた当時の部屋の様子が一部再現されています。

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部屋の一部は今でもルクセンブルク大公家の迎賓室として使われているのだそうです。

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こちらは寝室のようなのですが…

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こんな精巧な埋め込み式のワードローブが備え付けられていました。これだけ広いんだから別にスペースケチらなくてもいいのに…なんていうのは庶民の感覚なんでしょうかw

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この回廊の雰囲気なんて、どことなくスペインのアルハンブラ宮殿を思い出します。

ところでルクセンブルク、全く期待していなかったのですがとんだ美食大国でした!

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見た目はよくある中欧のこってりソースドロドロ料理に見えるかもしれませんがこのコルドンブルーとポテトのグラタンの美味しさは衝撃でした!パリの五つ星レストランを上回っていたと思います。ルクセンブルクがメシウマだなんて聞いたことがなかったので全くの予想外でしたが、このグルメを体験するためだけにドイツから来ても良いかもしれないと思えるほどの壮絶な美味さでした。

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こちらはマスですが、川が沢山流れているようなので新鮮なのが獲れるんでしょうね。見た目や盛り付けはドイツ語圏的な素朴さを感じさせますが、味は真性フランス語圏…いや、フランスを上回っているかもしれません。

こちらの「ディーキルヒ(ドイツ語の「教会」のような名前)」という地ビールも非常に美味です。

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因みにヴィアンデンのレストランで見かけたこの張り紙ですが、「Fiederweissen」と書かれています。これがわたしたちが初めて目にしたルクセンブルク語。ドイツ語の「Federweißer(フェーダーヴァイサー)」のことでしょう。

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フェーダーヴァイサーとは、秋限定の飲み物で、採れたての白ブドウを発酵させ、ワインになる直前の状態の発泡酒のことです。これがまた非常に美味しいのです。これ、まさに発酵途中のまま売られているので炭酸の発生により瓶が破裂する危険があるため密閉できず、放っておくとあまり美味しくないワインになってダメになってしまうので長期保存もできず、輸出が難しいため日本ではあまり見かけないと思うのですが、本当に美味しいので是非日本の方にも飲んでいただきたいなと常々思っています。

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こちらがルクセンブルクのフェーダーヴァイサー。ドイツ語圏特有の飲み物だと思っていたのですが、ルクセンブルクにもあるんですね。しかもオリジナルのルクセンブルク語があるようですし。なお、レストランの店員さんたちは、ドイツ語ペラペラでドイツ語で応対してくれる人もいれば、ドイツ語は一言もわからないけれど英語なら大丈夫な人もいて、隣の席のオランダ人とドイツ語で会話していたり、ルクセンブルク人同士なのにルクセンブルク語ではなくフランス語で会話していたり、かと思えば後ろの席の10人位の家族連れはルクセンブルク語で会話しているし…という感じで様々です。

ホテルのマネージャーもレセプションのお姉さんもドイツ語は母国語レベルでペラペラでしたが、隣のお店はまるでフランス。ドイツ語は通じず、英語で言えば理解はしてくれるけれど返ってくるのはフランス語…など、個人によって様々です。テレビをつけるとルクセンブルク語の番組を放送していましたが、フランス語の字幕が付いていて、つまり、ルクセンブルク人でもルクセンブルク語が分からない人がいるらしいのです。で、同じ番組の途中で突然言語がフランス語に変わってしまいましたが、ルクセンブルク語の字幕は出ませんでした。つまり、フランス語がわからないルクセンブルク人はいないようなのです。

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因みに、上の写真の記念碑はルクセンブルク語で書かれています。ルクセンブルク語は、クリスに言わせれば「ドイツ語のケルン方言とオランダ語を足して二で割った感じ。」だとか。確かに、聞いていると所々ドイツ語のような単語が出てくるのでなんとなく言っていることが想像できる場合もあります。恐らくドイツ語を話す人がルクセンブルクに移住した場合、三か月位でルクセンブルク語がわかるようになるでしょうし、その逆もしかり…だと思います。

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ヴィアンデンは、このように山に囲まれた小さな城塞都市ですが、それはルクセンブルクという国の特徴そのものでもあるようです。

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こちらは首都ルクセンブルク市の有名なアドルフ橋ですが、街全体が小高い高台と谷間から成っているようです。

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ルクセンブルクの首都はこんな感じ。

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アルザスのようなドイツ的要素とフランス的要素のごちゃ混ぜを想像していましたが、ルクセンブルクの街からは意外にも(というと失礼かもしれませんが)ドイツともフランスとも一線を画すオリジナル色を強く感じます。アルザスが人為的にフランス語圏化されたドイツ語圏で、フランスの中のドイツ村のような雰囲気なのに対し、フランス語を公用語に持ちながらドイツ語もそこそこ通じ、アルザス語同様ドイツ語の親戚であるルクセンブルク語も共存し、言語的にはまさに混沌の層を呈しているルクセンブルクが、意外にも隣接する巨大言語圏であるドイツ語圏・フランス語圏と一線を画し、オリジナリティを維持しているのは驚きでした。

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ルクセンブルクのオリジナリティであり、素晴らしさであるとも思う点が二つ。
一つ目は街が非常に綺麗なこと。ゴミであふれかえったゴミ箱が一つもない、そして公衆トイレが無料なのに清潔なヨーロッパの首都というのを初めて経験しました。ゴミが落ちていなくてトイレが綺麗なんて当たり前…と思われるかもしれませんが、わたしが知る中でそれが当たり前なのって日本とルクセンブルクだけです。

もう一つが、ヨーロッパとは思えない程人がフレンドリーなのです。これもヨーロッパを知れば知るほど、いかに奇跡に近いことなのかよくわかります。出会う人皆が感じよく、にっこり笑って接してくれる、どの街を歩いても、首都から地方の農村まで柄の悪い人が一人もいない!…まるで日本に帰ったような安らぎを覚えましたよ。これも国民一人当たりのGDPが高いことと関係しているんでしょうか。。

メシが美味くて日本並みに清潔で人がフレンドリーな国…ヤバい、ドイツが極右政権にならなくても移住したいかもw

一つだけ、ルクセンブルクのマイナスポイントを挙げるとすれば、フランス語圏なのにまさかのファッション後進国だということです。

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この変なストールを多用したファッションはモロにドイツ語圏の影響受けちゃってますね…

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いや、これなんか見てるとむしろドイツ語圏を上回るオリジナルのダサさを発揮してますね。これ、いずれも首都ルクセンブルクの最もイケてると思われるショッピングモールの写真ですが、道行く地元の女性たちが時折「キャー素敵!」「可愛い!」とか言いながらわざわざ近寄って盛り上がってました。
移住したら服は多分隣のフランスに定期的に買い出しですねw
それ以外は、ヨーロッパの奇跡のような、本当に素晴らしい国です。

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こちらはエッシュ・シュル・シュール城という荒城のある街です。

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この城はヴィアンデン城とは違い、現在は使われておらず、廃墟となっています。

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でも、放置され、忘れ去られている…というわけではないようです。所々に柵や足場が設けられ、色々な世代の地元の人々が散歩に訪れているようです。

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ヨーロッパではこうした城の残骸は珍しくなく、しばしば柄の悪い人たちのたまり場になってゴミが散乱していたり、あるいは城の歴史とは何の関係もないイベント会場として利用され、やはりゴミが散乱していたり…ということも結構あるのですが、ここはしっかりと整備され、街の人々からも親しまれ、まるで日本の城址公園のような心地よい場所になっています。
まるでルクセンブルクという国の良さを象徴しているようです。

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城跡から見た街はこんな感じ。

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この川と山谷に囲まれた小さな城塞都市の風景こそ、典型的なルクセンブルクの風景であり、同じく山に覆われた国土である日本の風景と重なり、なんだか懐かしいような不思議な親近感を覚えます。

フレンドリーな国民性、清潔な街など、日本との共通点もあります。
個人的には一番の共通点はグルメな国民性じゃないかなと思います。

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こちらはヴィアンデン城の調理場ですが、雑然としていますねw
これこそが、美食の秘密ですよ!食にこだわる国の台所は城の調理場から一般家庭のキッチンまで、結構雑然としているものなのだと思います。何故ならキッチンは常に稼働しているから。ドイツの家庭ではキッチンがまるでモデルハウスのようにピカピカで、いつ見ても新品のように片付いていることが多いですが、それは毎日三食料理をしていないからです。ドイツの家庭では、火を使うのは三日に一回程度で夜なんてサンドイッチで済ませてしまう…なんていうのも珍しくありません。そんなドイツ人から見ると、日本のキッチンはどんなにきちんと片付けられていても「汚い」「雑然としている」と感じるようです。

全く馴染みがないようで、日本と不思議な共通点もあるルクセンブルク。世界に誇る有名美術館があるわけでも、パリやロンドンのような必見の大都市があるわけでもなく、誰もが知る観光名所があるわけでもないですが、誰もが思い描くような「これぞ、ヨーロッパ!」な美しい風物が満載でありながらよくあるヨーロッパの悪いところが一つも見当たらない、奇跡のようなヨーロッパの国です。一言で言うなら、「上質なヨーロッパ」。日本であまり知られていないのがちょっと勿体ないです。

こちらはおまけ。グスタフは勿論今回もいっしょでした☆

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テーマ : 海外旅行記
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クレマチ店主(母)/アコ(娘)+クリス(娘婿)

Author:クレマチ店主(母)/アコ(娘)+クリス(娘婿)
はじめまして!
アンティークショップ「クレマチス」(http://antique-clematis.sakura.ne.jp)店主の娘、アコです。

日本の古いものは大切に、でも、新しいもの・異質なものも寛容に受け入れる…そんな母の元、小さいころから日本舞踊を習い、現「クレマチス」店舗である祖母の古い日本家屋で、着物や日本の古いものにたくさん触れる一方、ピアノや外国語を習わせてもらったり、父の趣味であるクラッシック音楽や西洋美術を身近に触れる日々を送ってきました。

そんな両親の教育が功を奏し…いや、仇となり(?)、実生活にはあまり役に立たない比較文化分野で大学に居残り、これまたあまり役に立たないドイツ語だけペラペラに。おまけに語学を通して若くてイケメンな(笑)ドイツ人の夫と出会ってしまい、海外に嫁ぐという親不孝っぷり。

そんな娘を、ずっと温かく見守ってくれていた母。そんな母が、「古いものを大切にする喜びを、少しでも多くの人と分かち合いたい」という純粋な気持ちで、亡き祖母の家で始めた小さなアンティークショップ。元々、ずっと苦楽を共にした姑である祖母の家を、大好きなアンティークに囲まれた素敵な空間にしたい…という素朴な思いから始めたこのお店が、あれよあれよという間にいろいろなご縁を引き寄せて、母はいつの間にか、昔夢見たアンティークショップの店主になってました。

「古き良きものに洋の東西はない。和と洋は、互いを引き立て合う良きパートナーになれる!」…母が「クレマチス」で体現している価値観は、わたしたち夫婦のモットーでもあります。

このブログでは、そんな母と二人三脚で、「クレマチス」のお店の情報と併せてドイツの生活・風物について少しずつ紹介していきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。

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