アンティークカップの話、その後のはなし
「このカップ可愛い」と言っている私の友人の目の前でサラリと奪うように買って行って下さったⅠさんのエピソードで、
『シェリーのカップを自分のお家に連れて帰れなかった私の友人』がNさんです。
Nさんはこれまでも一つずつお気に入りのアンティークの品々を、出会いがあるたびに、逡巡することなくお家に連れ帰ってもらっていました。
でも、今回はあの「シェリーさん」を連れて帰れなかったのです。
「このカップ可愛いね。」と以前から言っていたのにです。
「なんか、あの小花の優しい雰囲気のカップが忘れられないんだけど。」
と、次の来店時に
「このカップもすごく可愛いいよね。このカップを連れて行こうかな。」
と言ってくれたのがこのカップでした。

ドレスデンの小花が愛らしいカップ&ソーサー。
今度は、私がびっくりです。
私が自分用に連れて帰ろうと思っていたカップでした。

アンティークの品たちは、いつもいたずらをします。
「この家具素敵だけど、もう少し考えてから」
「このカップ可愛い。このカップでお茶を頂いたら素敵だけど、どうしようかな」
と、思っていらっしゃる方の目の前でサラリと別の方が買って行かれるのです。
それも、ずっと店内にあったのに、わざわざそのタイミングで。
それが、何度もです。
『これはやはり、アンティークのカップや家具たちがいたずらをしている』
と思ってしまうのです。

そして、無事にドレスデンのカップをお家に連れ帰ったNさんから
送られてきたのがこの写真です。
「お気に入りのカップを横取りしちゃって、ごめんなさい。」
という言葉と共に。
以前買って頂いたカップさん達の個性を取り結んで優しく収まっていました。

実は私は、このカップをお家の子にと思っていました。
それは、私が昨年末に娘の帰国時に娘のカップにしようとしまっておいたカップです。
でも娘が選んだのはこの子でした。


ローゼンタールのすみれ紋のカップ&ソーサー。
たっぷりのミルクを入れた紅茶が好きな娘には確かにこのカップはピッタリです。
それでいったんは店内に出したローゼンタールでしたが、毎日眺めていて
「このカップ、実は私が好きで、娘にという名目で仕舞っていたんだ。」
と、思い至って
今日持ち帰ろうと思ったその日に
「このカップも下さいね。」と、岡崎から初めてご来店下さったお若いご夫婦が、ミューラーのランプと共に買って下さったのでした!
「それならば」と身代わりのように少し似たドレスデンのカップを持ち帰ろうと思った日に
友人のNさんが「このカップにするね」と。
本当に不思議です。
「まるで、迷っているなら嫌ですよ!」とアンティークのカップさんが意思を持って
ついて行きたいと思う方のところに行くみたいに思えるのです。
アンティークのカップを巡る小さなエピソード。
『アンティークの不思議』に思いいたり、ますますアンティークが好きになりました。