嫁いで行く家具さん達 7

このエレガントなパーラーキャビネットは、まだあまり皆さんに見て頂いてはいないのですが、明日嫁いで行きます。
クリスマスフェア初日に、サイズを確認されたあと
「この家具下さい。」
と、まるでお花屋さんの店先で「このお花下さい。」と数本の花束を買うように軽やかにおっしゃったお客様のところに。
とても素敵な家具だから、しばらくはクレマチス店内で、食器やフィギュアやランプを飾って楽しみたいと思っていました。

「私、わかりますか?」とおっしゃったお客様の笑顔にマスクのお顔ではじめはわからなかったのですが、「あ、やっぱりあの方だった。」と思いながら
「はい、以前象嵌のキャビネットを買って頂いたんですよね。」と、私。
ピアノ教授をされていると伺っていました。以前お買い上げいただいた家具に施された象嵌のデザインが
「音符が並んでいるように見えるので気に入りました。」
「私、ピアノを教えているんです。」
と、そんなお話を伺っていました。
それにしても、今回のこの家具さんを一瞬で買って下さった軽やかさには驚きました。
「久しぶりにときめいた家具です。」
「葉書を見て、一目惚れしました。」
と、配送のご相談のメールで、教えて下さいました。
そうなんですね!と一人ホクホクしながらうなずく私です。
「人と人は出会い」ですが、「モノと人も出会い」です。いい出会いが私たちを育ててくれます。そして、その出会いは、「この出会いは大切にしよう」とゆっくりと胸に響いてくるものもあれば、このお客様がおっしゃる「一目惚れ」のように一瞬で虜になってしまう電撃的なものもあるのです。
大きな物、(そう、家や車や家具)でも、小さなもの(毎日使うカップやお茶碗お箸、あるいは手帳やペン)でも、私たちはいつも物を選び取って暮らしています。それは生き方を選んでいるということでもあると思うんです。
「なんでもいい」というのは、「モノを選び取っていない」という事。それは自分の暮らしを大切にしないことになると思います。
でも、迷い過ぎて選べない時も多いですよね。色々な場面で。私もたまにあります。
このお客様のようにいつも感性を磨き、自分の「好き」という感覚の根拠をわかって納得していれば、いつ「モノとのいい出会い」があってもすぐに反応できますよね。しかも落ち着いて。「後悔しないかしら」なんて思わないで。
明日嫁いで行く家具さんを磨きながらそんなことを思いました。「素敵な時間を紡いでいって下さいね。」と願いながら。